部屋を片付けた折に、
枕元の本棚に置く本のラインナップを変えた。
枕元の本棚というのは文字通り、
枕に頭を置いたままで手が届く、
ベッドに隣接した本棚だ。
枕に頭を置いたまま右を向けばそのまま眼に入る一角を
今までは、未読本を置くコーナーにしていたが、
これを新しく、気に入りの本だけを置くコーナーにしてみた。
覿面である。
夢十夜、漂流物、香水、柿の種、バートルビー、
蜘蛛女のキス、タクシー運転手の賢言…。
背表紙を眺めているだけで安心する。
何度も観た映画(見慣れた映画、とでも言おうか)を
BGMに流している感覚になる。
新しい本を次々に読まなくては、というのは
単なる一種の強迫観念であり、またある種のプライドである。
一連の背表紙を眺めていると、
そういった気負いから解放される。
本に対する気負いから解放されると、
「気負いからの解放」が他の事々にも伝播するようで
なんとも気楽な、ゆったりした脈になる。
そうして、矛盾するようだけれども新たに、
ここに加わるべき相性の良い本を見つけていきたいと
非常に穏やかに望むようになる。
対人関係についても同じようなものかもしれないなと思う。
背中や横顔を見ているだけで安心できるような旧い人は大切。
新しい人間関係をとりあえず広げなければというのは
強迫観念でもありプライドでもある。
一方で、人との新しく深いつながりに、まだ希望を抱いてもいる。
捨てた方が良さそうな気負いは
探せば探すだけありそうだ。
穏やかに欲するべき事と同じ数だけ。
そして眠る。
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